試練と憧れ

絶景の記憶。忘れないように。 これまでの登山の記録をあれこれと。 https://www.instagram.com/mahal2999/

【後立山連峰縦走】扇沢から鹿島槍ヶ岳・五竜岳を経て祖母谷・欅平へ③ 大自然の下山道編

3回シリーズで書いてきました今年の夏山ハイライト 後立山連峰の縦走編も今回で最終回。

 

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後立山連峰の縦走は普通、遠見尾根や八方尾根を下り、白馬村方面に降りることが一般的です。

しかし、一年に1回は冒険登山をやっておかないと。

今回は、一部で有名な「黒部渓谷鉄道」の終着駅である「欅平」まで歩きで降りて、そこから渓谷鉄道・登山地方鉄道・北陸新幹線を経由して下山します。

まさに、後立山連峰立山連峰輪切りコース。

 

マイナールート故の静かな下山道。この道を歩いた人だけが見られる特別な剱岳の景色。

 

前回2回とは少し趣のちがう玄人好みの下山道編です。

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唐松岳頂上山荘から水を求めてバカ下り。

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前回も書きましたが、この日の朝陽は本当に綺麗でした。

朝陽を堪能して、午前6時、いよいよ祖母谷方面に歩き出します。小屋の前はこれから出発という登山者で大混雑でした。

 

小屋のオーナー曰く、祖母谷方面は出発は6時がリミットとのこと。確かに、それなりのペースで歩いても欅平に14時30分になりましたので(終電は16時30分頃)あまり余裕はないかも。

 

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テント場の脇にはチングルマ。夏に来たらテントからチングルマを眺めるなんていう贅沢ができてしまいます。


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真ん中上が唐松岳頂上山荘。こんな離れたところまでテントが張ってあります。

唐松岳頂上山荘直下は坂も急ですし、テント場も脇にポツポツ隙間を狙って張っていくことになるので、テント場としては使い勝手は微妙かもしれません。五竜山荘は小屋直下に開けた平なテント場が広がっていましたので、手軽に張るならそちらの方が良いかも。


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テント場が途切れるあたりから道が荒くなってきます。

鎖とかも整備してくれていますが、これが低いんだなぁ、、、、滑落したときの命拾い用ですな。


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どこがコースなのやら、かろうじて一人歩ける細い踏み跡を辿っていきます。


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早々にキレットを上回る鎖場の通過も。

高度感がないのと、思いのほか足の置き場があったので、見た目ほど怖くはありません。また、途中に有人小屋がない8時間のロングコースなので、すれ違いの心配もまずないです。

 

この日は本年最大の30名がこの道を下るんだとか。山奥深いところを歩くので他に入山者がいるのは心強い。


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五竜岳の展望がとても綺麗です。もう随分降ってきました。


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朝7時の段階でガスが白馬村の方から上がってきました。昨日までは夕方までガスが上がってこなかったことを考えると、天気は少しずつ下り坂ですかね。(天気予報も晴れは今日まで)

 

3日も山にいると、日々の違いがよくわかります。天気の違いをダイナミックに感じられるのも登山の良いところ。


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歩き始めて約1時間。先ほどの展望地を最後に樹林歩きへ突入します。

突入しますが、まだまだ名残惜しむべからず。この先も所々展望が待っています。

 

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温泉から岳へ。何というとこで綺麗に切れているけど、この看板の文字は魅力的。

はい、どちらも大好きです。温泉と山岳を行き来する道とかどっちに行っても最高かよ。


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池塘があったり。ちゃんと木道が敷いてあります。これはありがたい。


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木道を過ぎてすぐのところに水場との分岐があります。

水はすでに空っぽ。この3日間水場というものに一度も行けず、水分補給に気を使っていても身体はカラカラ。

今日は標高も落としますので暑くなりますので、ここでの水補給が生命線。

 
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ありがてぇぇ!

稜線歩きで顔を洗うだけの水にも苦労してきた3日間。こんなに潤沢な水にありつけて、本当に感動します。

ちなみに水場とはこの沢の水のこと。


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地図上も水場指定されている沢ですし、流れも速く清潔さは問題ないでしょうが、オープンエアーなので、念のため浄水器を通します。今回の旅はこの浄水器が大活躍。

 

3L補給し、飲めるだけ飲んで、干からびつつあった身体に水を行き渡らせます。

 

気持ちよすぎてここで、15分ほどのんびりします。他に登山者もおらず、沢のせせらぎが本当に心地よい。

ほとんどの人が寄らないそうですが、ここは是非とも寄っていただきたいスポットです。

標識上往復15分ですが、往復10分でいけます。

 

体力完全回復させて、さあ、先へ進みます。


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水場への道はこんな感じ(写真は水場→分岐の順)

ちょうど刈り払ってくださったのか、とても歩きやすかったです。

 

餓鬼山への地獄の登り返し


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分岐直後が大黒銅山跡です。建物も何もなく、ボタ山(?)だけが往時の面影を残しています。

しかし、よくこんなところで銅を取ろうだなんて。


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木の根の階段ですね。


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先に見えるのが餓鬼山。

これの登り返しが今回の下山行で一番辛かった。


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ひらけた稜線部をひたすら上がっていきます。

標高を落としていることもあり、気温がぐんぐん上昇、日差しも強く、9月とはとても思えない、、、

先ほど水をフル補給して本当によかった。


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途中ザレ場もトラバースします。


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木が滑落寸前。ごめん、私にできることはない、、、


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今回一番道が細かったところがここです。


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刃渡りというか、両サイドかなり切れ落ちており、見ての通り、両足揃えて立てるかどうか。


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足がすくんだぜ、、、、 

実は高所恐怖症なので、ガクブルしながらなんとか通過。精神力も容赦なく削ってきます。

 

が、そんな登りも耐えきれば


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はい、絶景。

 

先ほどのところから約30分。唐松頂上山荘をたってから3時間30分。なんとか餓鬼山の山頂です。山頂はひらけていて、後立山連峰方面が大絶景です。白馬方面・唐松岳五竜岳鹿島槍ヶ岳

これまで歩いてきた山々が、また別の角度からたっぷり眺められます。ガスが山に堰き止められているおかげでまだこちら側からは大絶景が見られました!

ちなみに餓鬼山の山頂はコースから分岐した先にあります。ほんの数分。寄らない手はありません。


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立ち枯れの木と裏劔。

木と剱岳の組み合わせって意外とレアじゃないですかね。他に記憶がありません。


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10時30分、餓鬼山の避難小屋です。中はとても綺麗でした。

この先の道の危険さも考えると、ここで一泊するのも手かも知れませんね。

(12時までにはここを通過することが推奨されています。)

 

ちなみに、この避難小屋、地図だとまだかなり(15分くらい)降ったところにあることになっています。

こんなに地図と実際の位置が違うのも珍しい。

 

ここで追いついた方曰く、今朝ここではクマが出たとか。

急に恐ろしくなってきて、休憩もそこそこ、歩き始めます。

 

熊怖い 恐怖の四十八曲がり


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立派な木。このあともっと大きな青々とした巨木もありました。


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なんかいる!!笑


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真っ白なキノコでした。

こだまかと思いました。 可愛かった。 


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ダケカンバ?の爽やかな森林歩き(振り返り方面)

秋というより初夏を思わせるような心地よい木漏れ日でした。

 


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なーんて思っていたら恐ろしいものを発見((((;゚Д゚)))))))

 

これは、 あれ、  ですよね 、、、、

 

なんだか新しく見えるのですが、、、、

 

近くにいることを確信しました。以降、藪のガサガサ音が怖くてしょうがない。

 


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道迷いポイントとして注意喚起されていたところですね。

ここを左に尾根に入ると間違いのようです。時期柄か尾根側の道の踏み跡は完全に埋まっていましたので、そんなに間違いの心配はなさそうです。

 

この先、四十八曲がりと呼ばれる急坂に突入します。

ごろっとした岩。表面を苔が覆っていてめちゃくちゃ滑りやすいです。気をぬくと一瞬で滑ります。

 

そして、藪が濃くなります。

 

ええ、いつクマがひょっこりしても不思議じゃない雰囲気なのです。

 

しかも、上の木々には猿の群れ。ギャーギャー鳴いてくるのです。

 

早く通過したいのにペースを上げられない。

 

もう、ストックをカンカン鳴らしながら、迅速かつ慎重に通過します。

 

とても写真など撮っている場合ではない。


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約1時間。やっとの思いで危険地帯を通過しました。

先ほどの四十八曲がり以降、シダ類が生い茂っておりシダ類独特の香りが充満しています。


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四十八曲がりを抜けた先にこんな滝が出てきます。一人ならなんとか休める乾いた岩があるので、そこでやっと一息です。

 

この時点で12時30分。残りCTも2時間前後と安全圏に到達できてホッとします。

 

なお、この下山道10時30分頃に通過した餓鬼山避難小屋から祖母谷温泉に至るまで、これといった昼食休憩ポイントはありません。クッカーを使うような食事は餓鬼山避難小屋で早めにとるか、諦めるか、かなぁと思います。

(自分は行動食食べまくりで昼食抜きの選択を)


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先ほどの滝を超えてからはこんな非常に薄い踏み跡を辿ります。

右側は先ほどの沢に向かって急坂になっているので、この薄い踏み跡が唯一あるけるポイント。道も、登山道というより、歩けそうなところを歩く、という感じ。

ずっと気を抜けません。

 

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13時30分、ついに人工物(砂防ダム)が。

 

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その直後、祖母谷温泉に至る鉄橋が見えます。ついに人里にたどり着いた!

という安心感。昔の人の山越えというのはこういう気分だったのかしらと。無事山を抜けられてよかったと。気分的にはシシガミの森を抜けたアシタカ。

 

一安心 祖母谷からの黒部渓谷観光


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こちらが祖父谷。


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こちらが祖母谷。この少し上に祖母谷地獄(温泉が自噴している箇所)があるためか、川の水も成分濃い目で色が青いです。アルミニウム? 北海道の青い池を思い出します。

 

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右手が祖母谷温泉。ここで祖父谷と祖母谷が合流します。

祖母谷の名前の由来は「女好きのじいさんが、、、」とかなんとか、こんな山奥でよくもまぁ、笑


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祖母谷温泉のテント場です。

ちなみに、男湯の露天風呂(野天)はこの手前。覆いも何もあったものではないので、テントを出て10秒で湯船に突入できます。

 

入っている方がいたので写真は流石に自重しました。


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ここまでくると普通の観光客もちらほら。せっかくなので少し観光します。

祖母谷温泉から上流に5分ほど歩くと祖母谷地獄。


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源泉です。

地面に手を当てると火傷するかと思うほどに熱を持っていました。


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あまりの野天感。そしてそこまで景色も良くない(笑

ので、祖母谷温泉はこれくらいにして欅平方面へ。


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黒部渓谷の抉れた渓谷を横目に、川の音を聞きながら下っていきます。

 


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人喰い岩とか。 

上の岩が剥がれて落ちてくるから、と欅平駅でヘルメット貸してくれます。

このへんはもう完全に観光地、俗世の領域です。


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欅平駅が見えてきました。あの橋を渡れば今回の旅もゴールです。

絶景をフラッシュバックさせつつ欅平へ。


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この橋がなかなか綺麗なのです(来た道を振り返って)


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14時30分欅平駅に到着。唐松頂上山荘を出発して8時間30分。標高差は2100m。早月尾根に匹敵する長大な登山道。

 

やってやったぞ!!という達成感が満ち溢れます。

 

なお、まわりは観光客だらけ。

ここを起点にする登山道は、仙人谷方面へ向かう水平歩道をはじめ、玄人専用道ばかりなので、観光マップにも登山道があるなんて書いてありません。

まわりにも登山者はまるでおらず、、、、

 

場違い感ははんぱないです笑

 


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こんな可愛いトロッコ電車に揺られること1時間強で宇奈月温泉駅に到着します。

ほっと一息、電車に揺られてうとうとしながら帰路につきましたとさ。


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今回は道中通して天気にも恵まれ、思い入れが強かった山々を一つ一つ踏みしめ、展望しながら、本当に一生の思い出に残る最高の登山になりました。

 

いやー山っていいな。

 

夏山ももう終わりですね。

秋山、今年はどこに行こうかな。オススメの山があれば是非教えてください。

 

今回も長文、読んでいただきありがとうございました。